伊勢神宮の南に位置する剣峠の早朝の風景。剣峠は伊勢の宮域林として保護されており、5,500ヘクタールもの広さがあるそうだ。これは東京都世田谷区にも匹敵する面積なのだという。将来の式年遷宮のときに御用材として使われる木材を育てるため、植物だけでなく、そこに生きる鳥や動物も守られているそうだ。
早朝の剣峠は、朝日が昇ると同時に森に含まれている水が蒸気となって幻想的な光景を作り出す。まるで水墨画のような風景だ。墨を流したような美しいグラデーションが目の前に展開され、刻々とその姿を変えていく。写真家として、この上ない被写体に出会えたと感動した瞬間だった。