これは由貴夕大御饌(ゆきのゆうべのおおみけ)の儀という儀式の風景だ。神宮では毎日神様に食事を捧げる儀式を行うが、神嘗祭と年に二回の月次祭(つきなみさい)の際に由貴夕大御饌の儀が行われる。これは神様に捧げる食事(御饌)とご神官の修祓(しゅはつ・穢れを祓い清めること)を行っているところを撮影したものだ。
夜の儀式ほど神宮の「静」の表情を厳かに感じることはない。炎に照らされた木々は畏怖の念を覚えるほどの凄みを感じさせる。人々が神に対して感謝と五穀豊穣を祈る儀式を、美しい炎によって木々が見守っているような表情を見せてくれる瞬間でもあった。1300年の昔からこれと同じ光景が繰り返されていることに想いを馳せると、神宮の現代に生きる神話に畏敬の念を抱かずにはいられない。