毎年10月15日・16日の神嘗祭を奉祝する行事として、その年に収穫されたお初穂(お米)を神宮に奉納する「初穂曳」。
式年遷宮行事のひとつである伊勢の民俗行事として伝えられてきた「お木曳行事」「お白石持行事」を伝えることを目的に、昭和47年から毎年開催され、今年で第52回を迎えます。
神嘗祭は、神様に新穀を捧げ、五穀の豊穣、国民の平安などをお祈りする大祭で、神宮で執り行われる年間千五百余りのお祭りの内、最も重要な祭儀です。
装束・祭器具も一新することから、神嘗正月とも呼ばれます。
お祭りは、午後五時の「興玉神祭」と「御卜」に始まり、午後十時からの「由貴夕大御饌」、翌深夜二時からの「由貴朝大御饌」を奉った後、正午からは勅使(天皇陛下のお使い)が参向され幣帛という五色の布や織物などを御奉納なされる「奉幣の儀」、夕刻の「御神楽」と続きます。
夕と朝の「由貴大御饌」は、神宮神田で収穫された新米の御飯や御餅の他に、さまざまな神饌を奉る儀であり、かがり火の薄明かりのもと厳粛に行われます。夜間に行われるため祭儀は奉拝できませんが、参拝時間内の祭儀は参道等から奉拝できます。
天孫降臨の神話では「三種の神器」とともに天照大御神から「稲穂」が託されたとされています。お米をつくる暮らしが、この国の繁栄と平和をもたらすとの教えからはじまり、お米を命の糧として国を建て、神々を祀り豊作を祈り、収穫の感謝を捧げてきました。
二月の祈年祭に始まり神田下種祭、御田植初、風日祈祭、実りの季節となる九月には抜穂祭。
神嘗祭を迎える一連の神宮の祭儀は、現代まで連綿と続けられてきた稲作を中心とした日本の国づくりを象徴する祭祀です。
そして、天皇陛下が新穀を神に捧げ、共にお召し上がりになるのは十一月の新嘗祭。天皇陛下の一年を通して行う祭祀の中でもっとも重要とされ、こうして稲作文化とともに日本古来の心が伝承されてきました。