神嘗祭は、神様に新穀を奉げ、五穀の豊穣、国民の平安などをお祈りする大祭で、神宮で執り行われる年間千五百余りのお祭りのうち、最も重要な祭儀です。
装束・祭器具を一新することから、神嘗正月とも呼ばれます。
お祭りは、午後五時の「興玉神祭」と「御卜」に始まり、午後十時からの「由貴夕大御饌」、深夜二時からの「由貴朝大御饌」を奉った後、正午からは勅使(天皇陛下のお使い)が参向され幣帛という五色の布や織物などを御奉納なされる「奉幣の儀」、夕刻の「御神楽」と続きます。
朝夕の「由貴大御饌」は、神宮神田で収穫された新米の御飯や御餅の他に、さまざまな神饌を奉る儀であり、かがり火の薄明かりのもと厳粛に行われます。夜間に行われる祭儀は奉拝できませんが、参拝時間内の祭儀は参道等から奉拝できます。
私たち日本人の主食であるお米。天孫降臨の神話では「三種の神器」とともに天照大御神から「稲穂」が託されたとされています。お米をつくる暮らしが、この国の繁栄と平和をもたらすとの教えからはじまり、お米を命の糧として国を建て、神々を祀り豊作を祈り、収穫の感謝を捧げてきました。
神嘗祭を迎える一連の神宮の祭儀は、現代まで続けられてきた稲作を中心とした日本の国づくりを象徴する祭祀です。
神嘗祭の当日、ご正殿を囲む「内玉垣」には、「懸税」と呼ばれる全国から寄せられた稲の束がずらりと懸けられます。「税」は稲の上代語(=昔のことば)のこと。神様にチカラを受けていただき、また一年健やかにご活躍いただきたいという気持ちが込められています。
毎年神嘗祭には天皇陛下ご自身が皇居でお作りになられた御初穂が神宮に献進されます。天皇陛下の御初穂には紙垂がつけられ、内玉垣に並び懸けられます。